巡る季節の中で
日ごとに春めく陽射しに
ようやく蕾をほどいた梅の香りが
風に乗って届くようになりました
春の草花たちは
四つの季節の向こう側で
いつも健気に両手を広げて
優しく待ってくれている気がして
ただ淡々と繰り返される
揺るぎない季節の美しい彩に
心は理屈抜きに癒されます
春は出会いと別れの季節
進入学や卒業
新しい門出や暮らしの始まり
そんな流れのなかで
心が揺れることも多い時期でもあります
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なかでも人の悩みの八割とも言われる
人間関係が変化すると
思い煩うことも増えるのかも知れません
過去には
私にもそんな経験が少なくはありませんでした
人と人との協調性を
幼い頃から美徳として教育されるこの国
どんな人とも仲良く上手につきあうことが
何よりも大事で
誰でも話せばわかり合えると信じ
それでも通じ合えないのは
自分が悪いと責めて苦しんだり
けれども
人の気持ちをわかろうともせず
すべてを自分の物差しで測り
しかもそれを周りの人に押し付けようとする
話しても分かり合えることのない人というのは
残念ながら世の中にはいて
開かない鉄の扉を叩き続けることは
自分自身の心が傷ついて
疲弊するだけ
そして
そんな人の陰には必ず
我慢を強いられる人がいて
優しくて自分のことよりも周りを気遣う
思いやりのある人ほど
その犠牲になってしまう
そう気付いたときから
そういう類の人たちとは距離を置こうと
決めたのです
けれども
そんな問題に出会うということは
自分の中にも結局は
同じような影を抱えていること
だからこそ影響を受けているということに
あるとき気がついたのです
底なしの承認欲求や満たされない想い
そういうものが自分の中にもあるのなら
まずそれを解放しなければ
根本的な解決には繋がらない
その想いを解放するには
どうすればいいのだろう
そう思い始めたころに出会ったのが
ネイティブインディアンやアイヌ
いわゆる先住民族の人々の思想や
生き方であったり
野生の動物や植物たちの
優しく逞しく美しい生きざまでした
見返りを求めないほんの少しの思いやり
譲り合う気持ち
分かち合おうとする心
他者と自分との違いを認めることのできる
おおらかさや自立心
生きる上において大切なものは
極めてシンプルなのに
情報過多で複雑になりすぎた社会の中で
私たちは当たり前のことが理解できずに
苦しんでいる
そんな気がしてならないのです
空が青くて綺麗だね
月が美しいね
波の音が優しいね
花が咲いたね
そんな想いにそっと心を傾けてみる
生きていく上では
何の役にも立たないと思われているものほど
今 心は深く求めているものかも知れません
満ちていく月
蕾をほどく春の花たちの歌声
新しい季節の始まりが
煌く時間となりますように
* * *
春という季節は
すべてを一度許すために巡ってくる
~ヘンリー・デイヴィッド・ソロー~
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