霜月の想い
11月に入りました
夏の終わりから秋にかけては
未曾有の災害が続き
今も広範囲にわたるその傷跡が修復しないまま
不自由な生活を余儀なくされている方が
多いかと思うと心が痛みます
被害に遭われた方々の
一にも早いご回復と
穏やかな生活が取り戻せることを
心から祈りたいと思います
ここ数年の異常気象はいつのまにか
異常ではなく通常になりつつあり
けれども一口に「自然災害」という言葉で
片付くものではないことを感じる方も
少なくはないと思います
私が住むここ関西も
昨年は大雨による災害被害を受け
「平成最悪の大水害」と呼ばれました
大阪という都市は約6千~7千年前の縄文時代には
海の底にあり、その土地が長い歳月をかけ
平野へと形成したのです
中世の大阪平野には
縦横無尽にいくつもの川が流れ
水運都市「水の都」として発展する一方
洪水がたびたび発生し
人々の生活を苦しめていました
そこには先代の人々と自然との
深い暮らしの繋がりや恩恵があったと同時に
命をかけた自然との壮絶な
闘いの歴史と英知も記されています
天下統一をした豊臣秀吉は
大規模な河川改修に着手し
淀川と大和川を切り離すことにより
大阪平野の洪水被害は激減しました
改良工事の責任者であった沖野忠雄氏は
その後 日本全国の河川と港の改良に携わり
「日本の治水港湾工事の始祖」と呼ばれました
沖野氏は人間的な魅力も併せ持ち
人一倍の部下思いであったと言われています
地位や名誉にも無頓着で、生涯純粋な一技師として
わが国の発展に貢献しました
その後も現在に至るまで
先代の教えや英知を引き継ぎながら
新しい時代のテクノロジーを取り入れ
度々防波堤の建設や改良工事を繰り返されて
私たちの暮らしは守られています
ここ大阪が台風の直撃を免れることが
不思議と多いのは
そういった先代からのご加護や
人々の心に刻み込まれた想いがあるからかも
しれません
その土地の成り立ちや自然をよく観察し
そして何よりその土地や、生まれた国の自然を愛し
人々の暮らしを守りたいという
強い意志や深い想いのもとでこそ
成し遂げられるものがあるのではないかと感じます
時代が変わり
先日厳かに天皇陛下御即位の儀式が
執り行われました
大雨が降っていた空が午後には晴れ渡り
大きな虹が架かったのを
多くの人が見上げ 祝福の虹だと喜び合いました
偶然であったとは言え
そういった自然の姿を目にしたとき
幸福の兆しを感じ
祝福であると思える心を大切にしたいと
深く感じた日でもありました
* * *
草木に愛を持つことによって
人間愛を養うことができる
思いやりの心 我が愛する草木でこれを培い
その栄枯盛衰を観て 人生なるものも解し得た
植物学者 牧野富太郎
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