花と歩む道で

花散らしの優しい雨が降り

桜の季節が静かに終わりを告げると

その後を追うように

辛夷や木蓮の薫りが漂い

花水木が空に向かって咲きはじめています



草花たちのリレーのなか

目に映る風景や風の薫りに

1年前の同じころ

胸に抱えていた想いが

ふと蘇ってくることがあります


春夏秋冬

四つの季節を通り抜け

哀しみも喜びもすべて受け容れながら

ただ前を向いて歩いてきたこと



足取り軽く歩めた時もあれば

うつ向きがちに立ち止まっては

重い足を引きずるように

少しずつ

やっとの想いで歩んできた道もあったけれど



気が付けば

辿り着いたのは

高い山の頂ではなく

ずっと昔から大好きだった

心安らぐ懐かしい場所でした

けれども今 同じ場所で見る景色は

以前とはほんの少し

違って見えるような気がして



ひたすら遠い先を見つめて

ただやみくもに上を目指し

前に進むことだけがすべてではなくて


こうして安らぐ懐かしい風景に出会えること

目に映るその景色を

変わらず美しいと思えることの方が

何より大切なのだと

そう感じるようになりました

これからは

目に映る風景をもっと楽しみながら

ゆっくりと歩きたい


時折立ち止まって

足元にある小さな美しいものたちや

身近なものを手に取って見つめ

一瞬一瞬を愛おしく抱きしめるように


* * *


年年歳歳花相似たり

歳歳年年人同じからず

~劉 希夷~