たしかなもの
冬の紫陽花に出会ったことが
ありますか
雨の季節を彩る花の
もうひとつの生命を生きるような
美しいその姿に
ある日魅せられ
毎年この季節に
会いに行くようになってから
もうどのくらいになるでしょうか
柔らかなセピア色を纏い
フランスアンティークのレースのように
繊細に姿を変え
凍てつく冬の朝
光を受けて虹色に輝く
その佇まいには
「枯れ」という言葉は似合わない
静かに眠っているような
時には
まるで歌っているかのような
触れると壊してしまいそうなほど
愛おしい
生命の鼓動を感じる
花の季節だけが
すべてではなくて
人の目に触れることなく
そっと育まれているものたちの
透きとおるような聖なる時間
永遠に繰り返されてきた
その営みが
これからもどうか変わらず
そこにあってほしいと願う
自然界には右肩上がりという言葉など
必要ない
探しても
もう見つからなくなってしまった
無垢で美しく
たしかなものが
そこにはある気がして
* * *
『美しい絵を買う必要はない
森の中の湖は自然の画廊のように
毎日 新しい絵をかけ替えている』
~ヘンリー・ディヴィットソロー~
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